野鼠新聞-NNS-

ムカデ人間(そんな上手い話があるものか、と…)

そんな上手い話があるものか、とそのメールを削除した。その時はそうだった。

本文には
「短文が流行ってテキストサイトの時代は終わる、短文の更新しかしていないテキストサイトが高層階に住むチャンスがやってくる」
「画像を投稿して楽しむテキストサイトとは対極のものが流行り、テキストサイトなど忘れられる」
「これからは短文と写真の時代になる」

なんてことが書いてあった
本当だったら最高に愉快な話だった、なにせ長文が苦手でもっぱら写真が趣味だったからだ
そんな都合の良い時代になればチャンスがやってくることが期待できた

暑さにやられてしまったかもしれない、一つここはメールを信じてみようと思った

どうせこれより落ちはしないだろうと思っていたから、短文を半ばやけくそ気味に更新していった
サイトは瞬く間に評判になった、メールが当たったのだった
友人たちは何故急に短文を更新するようになったのか不思議がった

そして、いつしか短文を更新するサイトが増えていき
何故か高層階がステータスになっていった
低層階には長文を更新していたサイトの管理人が詰め込まれた

(あのメールには次は写真だと書いてあったな)
すっかり、あのメールに頼り切っていた
何せ一回当たったのだし、損するわけでもないのだから博打を打ってもいいと思っていた

テキストサイトブームの結果、写真は廃れていったのだった
だから、写真は二束三文で売られていた
生活が苦しい低層階の住人から写真を買い取っていった
「あんなものをどうして欲しがるのか」
「持ってってくれるなら幾らでも持ってけ」
人々はそんな事を言って、彼に写真を渡していった

彼は集めた写真をひたすら加工した、変な色をした幻想的な写真にしたり
コラージュして面白いであろうものにしたり

そして、それをひたすらに投稿していった
最初は物好きが見る邪道なサイトだったがまた、瞬く間に評価を上げていった

次はどうすれば良いのか不思議なメールを待っていた
一向にメールは来なかったのだった

「疲れた、やっぱり何か書くのは苦手だ…こんな妄想誰も読まないな…」

そんな世界があればいいのにと思いながら、温いビールを一気に飲み干した

Ctrl+A&delete

彼は消してしまった

(17/01/03)

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